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子育てにおいても『生活保護』という選択肢
~心から子どもの幸せを願う気持ち~

生活保護は人生の保険として活用

 ちなみに、厚生労働省が今年3月に発表した資料(生活保護制度の概要等について)によると、実際にこの20年間で生活保護を受給する母子世帯はほぼ倍増しています。実数で約10万世帯の母子世帯が、実際に生活保護を受けている状況です。

 

 私たちは事故や災害に備えて保険に入り、定期的に保険料を支払います。火災保険であれば家が火災に遭ってしまった時のために、自動車保険であれば自動車事故などの時のために、保険に加入し保険料を支払います。

 ならば生活保護もそれと同じように、人生の保険のようなものだと考えても良いでしょう。自分が払った税金が直接自分の生活保護費に充あ てられるわけではないので、間接的ではありますが、人生に掛けた保険が支払われているようなものです。

 生活保護を受けている他人を見ると、あたかも自分のお金を使われているような気がしてしまうかもしれませんが、保険のシステムと比べれば納得できるのではないでしょうか。

 火災や自動車事故は、日頃から気を付けていたとしても、いつ起きてしまうかわかりません。同じように人生においても、予期せず苦しい状況を迎える可能性は常に、誰にでもあります。

 そもそも人生そのものが誰にとっても初めての経験ですから、失敗する人がいて当然です。初めての人生を一人一人が果敢に生きているのですから、つらい時はみんなで助け合い、そこからの人生を応援したいものです。

■受給資格を確認する扶養照会の現状

「周りの目が気になる」という点についても同様に、人生ではさまざまなトラブルが突然起こり得るのですから、受給はまったく恥ずかしいことではありません。このような認識を少しでも広めていくことが大切だと思います。

 一方で、中には「親や親族に、生活保護を受給することを知られたくない」という人もいるでしょう。確かに生活保護の制度には「扶養照会」というものがあり、受給者を扶養できる人が本当にいないかを確認することが原則となっています。

 ただ、この「扶養照会」は実は例外が広く、生活保護法が改正を重ねる中で現在では次のような運用になっています。(以下「平成25年度全国厚生労働関係部局長会議〈厚生分科会〉資料」より引用)

 扶養の照会は現在でも行っているが、この通知および報告徴収の対象となり得るのは、福祉事務所が家庭裁判所の審判等を経た費用徴収を行うこととなる蓋然性が高いと判断するなど、明らかに扶養が可能と思われるにもかかわらず扶養を履行していないと認められる場合に限る。

 つまり、扶養できるかの調査自体は行っているものの、明らかな場合を除けばそのことを扶養するべき人(親など)に伝えることはしていない、ということです。したがって、親や親族の目をほとんど気にすることなく、まして知られることなく生活保護を受給することができます。

 繰り返しますが、生活保護の受給は恥ずかしいことではありませんし、怖いものでもありません。あくまでも社会の仕組みのひとつです。

 

 私たちが主張したいのは

「経済的に苦しければ生活保護があり、実際に制度を利用しながら立派に子育てを行っている人がいる。精神的な問題も含めてすべてにおいて子育てが厳しくなってしまったとしても、養子縁組という選択肢がある。何よりも優先されるべき大事なものは子どもに注ぐ無限の愛情と、心から子どもの幸せを願う気持ちに他ならない」

 ということなのです。

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『インターネット赤ちゃんポストが日本を救う』
著者:阪口 源太(著)えらいてんちょう(著)にしかわたく(イラスト)

 

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親の虐待や育児放棄を理由に国で擁護している約4万5000人の児童のうち、現在約7割が児童養護施設で暮らしています。国連の指針によると児童の成育には家庭が不可欠であり、欧米では児童養護施設への入所よりも養子縁組が主流を占めています。

本書ではNPOとしてインターネット赤ちゃんポストを運営し、子どもの幸せを第一に考えた養子縁組を支援してきた著者が国の制度である特別養子縁組を解説。実親との親子関係を解消し、養親の元で新たな成育環境を獲得することができる特別養子縁組の有効性を、マンガと文章のミックスで検証していきます。

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阪口 源太

さかぐち げんた

NPO法人全国おやこ福祉支援センター代表理事

1976年福井県生まれ。NPO法人全国おやこ福祉支援センター代表理事。自ら創業したIT会社を売却後、東日本大震災をきっかけに社会起業家に転身し、NPOを設立。大阪を拠点として、特別養子縁組のサポートに携わる。著書に「産んでくれたら200万円 -特別養子縁組の真実-」(Kindle版)がある。


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  • 阪口 源太
  • 2019.08.02